2023年9月 南アルプスの悪沢岳~赤石岳周回に出かけたときに出会った方のことですが、あまりにも無理な行動をされていると思い、体力的に厳しくなっていく自分への自戒も含めて投稿することにしました。
この山行は、椹島から入山し1日目は千枚小屋泊、2日目は千枚岳~悪沢岳~赤石岳を縦走し赤石岳頂上の避難小屋で宿泊、3日目に赤石小屋を経由して椹島に下山というものでした。
事件の始まりは1日目の行程を終えて千枚小屋のベンチでビールを飲んでいた時でした。
隣のベンチの女性がソワソワとしながら、「今日、椹島を一緒に出発した男性なんですが、到着が遅くて心配なんです」とおっしゃっていて、事情を聞いてみると過去にツアーで一緒になった方と偶然椹島で再開したそうで、その男性はどうやら初めての単独行らしく、あまりにも到着が遅いとのこと。
結局、その男性は我々より4時間遅れで小屋の食事ギリギリに到着となり、なんと12時間近くも歩いてきたとのこと。事情を聞いてみると膝が痛いとのことですが、どうもこのルートを回るには経験不足のように感じました。
2日目の宿泊は私と同じ赤石岳山頂の避難小屋に泊まる予定で、4時には出発するという話まで聞いて就寝のため別れました。
さて、その2日目ですが、私は4時30分に千枚小屋を出発したところ、当該男性と千枚岳山頂で再会。
昨日の苦い経験から考えれば、今日はもっと大変なはずで、先を急いでいるのであろうと思ってましたが、意外とのんびりと山頂を楽しまれているようでした。
ここで、その男性とは別れて自分は午後の天気が心配なので目的地に向けて進んで行った結果、13時半過ぎには到着となったのですが、危惧していたとおり当該男性がいつまで待っても来ない。
途中の荒川小屋に泊まることにしたのであれば安心なので、小屋番さんにキャンセルが入っていないか確認するもキャンセルされていない。…ということは未だ頑張っている最中?
結局到着は17時頃となり、今日も13時間歩いてきており、到着するなりヘタっと座り込み、途中転倒したとのことでメガネが曲がって目の横からは血が出ている。満身創痍
傷の手当てをしてあげながら夕食のことを聞くと、自前の食材は持っていないのか、お弁当の残りを食べるとか。
温かいものを体に入れないと体力も戻らないとお話ししたところ、カップ麺がおいしそうと小屋番さんに注文。
さんざんな目に会って本人も大変なことは理解できるが、小屋番さんを含め多くの方が心配していることは理解できていない様子。
明日は、椹島出発のバスに間に合うよう下山しなければいけないので、時間に追われる厄介な日になりますねとお話したところ、何時に出発する予定ですか?と逆に問われたので、自分は4時には出発する予定と回答すると、1時30分出発とされるそう(根拠不明)。
そして、3日目。最終日の未明を迎えました。
1時過ぎに当該男性が寝床から出ていく気配があり、私はそのままウトウトしながら3時に起床。3時40分出発となりました。
男性から2時間遅れで、コースターム6時間のルートですから、その男性に追いつくのかなり先になるだろうと想定し出発。
が、2時間後の富士見平でその男性と再会。
あまりにも早く追いついてしまったので、何かあったのか?と聞いたところ、「マークが良くわからずルートから外れ迷うことが多く時間を費やした」+「ヘッデン(ライト)の電池がなくなって、空が白んでくるまでしばらく動かなかった」とのこと。
更には「小屋に朝食を置いてきてしまった」という。
最終的に椹島に11時30分ごろに到着となり下山を果たせたものの、無事であったことが奇跡的なくらいな「遭難必至な高齢者」の方でした。
話を総合すると、ご本人は1~2回の山行ツアーで「自分はできる!」と勘違いされたようです。
自らの力量でいったいどのくらいの累積標高を登れるのか?時間当たり何m登れるのか?
どのような行動計画ならば安全なのか?食糧計画はどうする?ウエアリングはどうする?
など、力量を基準とした無理のない計画と準備ができないにも関わらず、入山してしまったということなんだろうと思いますが、一番恐れるのは「自分は登れた」…とさらなる勘違いをしてしまうことですね。
実態は「運よく、登って下山できただけ」ですが。
このようなことを目の当たりにしました。
「人のふり見て我がふり直せ」であります。