今日は山小屋泊についてお話ししたいと思います。
山小屋と言っても、食事や寝具の提供をしてくれる小屋から、管理人のいない避難を前提とした避難小屋などいろいろな種類があります。
例えば、浄化槽があって、生活排水やし尿などが浄化できる小屋がありますが、このような小屋では下界と同じような生活ができるものの、浄化槽が無くバイオトイレやし尿をタンクで下界に降ろさなければいけないような小屋では、自然を破壊しないように小屋独自のルールに基づいて過ごすことが求められます。
ここでは、浄化設備が無く、また雨水を溜めて飲用にしている天水小屋に泊まることを描いたストーリーで描いてみたいと思います。
🔳某年9月2日 14:30 雨、気温17℃ 風弱し
リーダーAさんとB、Cさんは前々から登りたっかた〇〇岳登頂を無事終えて、〇〇岳の肩にある△△山荘に宿泊に向かっていました。
🔳先ずはチェックイン
期待していた天気は残念ながら好転することことはなく、雨の中を無言の降下を続けてきた3人。やっと小屋に着いた安堵感でドッと疲れが襲ってきた。
Bさん「やっと着いたね。今日は長かった。午後から天気が良くなると思ってたけど、結局雨のまま
だったね。早くチェックインして着替えよう。」
Aさん「宿泊者リストは予めダウンロードして書いてきたので、私ひとりでチェックインしてくるね」
Cさん「ちょっと待って。濡れたカッパは脱いで袋へいれてから小屋に入るのがマナーでしょ。」
Bさん「Yes!小屋の中を濡らしたらいけないよね!」
皆さん疲れてたけど登山者のマナーは忘れてなかったみたいです。
- 雨の日は小屋や他の宿泊者に迷惑をかけないよう、濡れたものは外で雫をよく払ってから、予め準備したビニール袋を準備しておくと良いですね。
- また、チェックインは代表者1名で行い、予め宿泊者名簿などを小屋のホームページでダウンロード&記入しておくことも大事なことですね。
Aさん「OK!チェックイン終わったよ! 夕食5時、朝食5時で~す。登山靴は脱いだら土間の奥にある 靴棚に入れてくださいね。インソールを外して乾燥しやすくしておこうね。」
B,Cさん「Okay!」
Aさん「靴脱いだ? 小屋番さんが部屋まで連れていってくれるよ。途中、乾燥室や食堂、トイレの
場所を教えてくれるからよく聞いておいてね」
🔳さあ大部屋に移動だ!
小屋番「では部屋にお連れしますね。左が食堂になっています。時間になりましたらお呼びしますので、食券を持ってきてください。右側に乾燥室、その奥がトイレです」
- 着いたばかりで小屋番さんの説明が頭に入ってこないこともありますが、よく聞いておかないとあとで迷ってしまいます。集中してよく見て確認しておきましょう。
- 靴箱には名前を記入して靴に取り付けておく荷札が置いてあるところもあります。有効活用しましょう。
小屋番「部屋は〇〇〇平という名前です。3人は蚕棚の2階B-1~3番を使ってくださいね。」
「消灯は9時になります。発電機が止まり明かりがすべて消えます。それではごゆっくり」
- 大部屋では男女の寝床を区分している小屋もありますが、男女分け隔てせずグループ毎に集めることもあります。
- 消灯時間になると明かりが無くなりますので、布団は早めに敷いておきましょう。また必ずヘッドライトを手の届くところに出しておきましょう。
- 布団は、敷布団+毛布を敷いて、上は毛布+掛け布団とします。毛布と毛布の間に人間が挟まるのが一般的です。
- 小屋によっては「インナーシーツ持参」の場合があります。事前に確認しておきましょう。
- 消灯前に就寝につく方も多いので、部屋では気遣いを怠りなく。
Cさん「さあ、みんな着替えをしようよ。ウエットタオル持ってきたのでみんな使ってね!」
Bさん「脱いだ衣服やカッパは乾燥室にかけに行こう。ついでに顔や手を洗ってきたいね。タオル持っていこうよ!」
- 汗をかいた体はウエットタオルで拭いてスッキリ。背中まで拭ける大判がGood!。
連泊などでは「水のいらないシャンプー」もあるとリフレッシュ感が高いですね。 - ごみはすべて持ち帰りが原則。ウエットタオルみたいな湿ったものを入れるゴミ袋は「大きなジップロック」が最適かも。
🔳小屋の探検に行こう!
Aさん「乾燥室はこの部屋だね。石油ストーブで温めているんだ!ストーブの近くは危ないね!」
Cさん「ねえ、せっかくだから食堂やトイレも見て行こうよ!」
「食堂の奥に談話室があるよ!山の本がたくさん置いてあるし、きれいな写真も飾ってある。あとでゆっくりしたいね。」
Bさん「トイレは洋式だけど、バイオトイレって書いてある。ドアの裏側に使い方が書いてあるよ」
- 乾燥室ではハンガーは独り占めしないように工夫して干しましょう。
コロナ禍以来、乾燥室は雨具以外は干してはいけないという小屋もあります。小屋のルールを確認しましょう - 浄化槽がない小屋では石鹸や歯磨き粉、シャンプーなどは使えません。
また、水は超貴重品です。流しっぱなしや洗濯はもってのほか。衛生維持のために必要な最小限の量で済ませたいものです。 - トイレではお尻を拭いた紙は便器に捨てることができないタイプが多いです。紙は便器脇の箱に捨てましょう。
(し尿の運搬の問題やバイオでは紙が分解されないといった課題があるからです。) - バイオトイレでは人力撹拌式のものが時々あります。用が済んだ後に、自転車のペダルのような撹拌機を漕ぐものです。
🔳小屋でのお楽しみ
Cさん「ねえねえ、食事まで時間があるし、喉を潤しにいこう!」
Aさん「やった!ビールのお時間!わたしたくさんお菓子持ってきたよ!」
Bさん「ソフトドリンクも冷えているみたいだし、談話室でまったりしようね!」
- 多くの小屋は就寝部屋での飲食は禁止です。(夜間に喉を潤す程度は問題なし)
飲食は談話室や食堂でしましょう。(一部小屋では談話室の飲食禁止もある) - 北アルプスなどの大きな小屋ではジョッキで生ビールが飲めたり日本酒地酒があったりします。
🔳夕食の時間
小屋番「5時になりました。夕食の準備が整いましたので食券をお持ちになって食堂へお越しください…」
Aさん「じゃあみんな!食事にいこう。食券はわたしが持っていくね」
小屋番「何名様ですか?」
Aさん「3名でお願いします。」
小屋番「それでは、このテーブルの奥から3名様お並びください」
「お茶はテーブルごとにポットがおいてあります。ご飯と味噌汁は各自でよそってください。おかわりは自由です。」
「食事が終わりましたら、グループ毎に同じ食器を重ねて、こちらのカウンターまで持ってきてください」「食べ残しはこの中に捨ててください」
Aさん「では、いただきまーす」
- ご飯と味噌汁はお代わり自由な小屋がほとんどだと思います。カレーの場合はルーもお代わりできたりします。
- 片付けはセルフサービスが多いですが、小屋によっては小屋番が片づけてくれるところもありますので、食前の説明をよく聞きましょう。
🔳就寝
Cさん「ねえ、今日は長かったし疲れたね。明日も早いからまだ消灯前だけど寝ようと思う」
「どんな格好で寝るの?」
Aさん「体に密着しているサポートタイツとかは脱いだでしょ?ズボンはそのままでいいよ。靴下は脱いだほうが休まると思うけど、寒くなりそうなら薄手の圧迫しないのを履いてね。あと上も圧迫感が無くて、寒くならないようにね。明日着るつもりのベースレイヤを着てもいいよ。」
Bさん「2階って暑い空気が上がってくるから結構あったかいのね。暑くて喉乾くかも?」
Aさん「そうだね、今は1階に人が居るから暑いけど、朝方は冷えるかもしれないので羽織るものを準備しておくといいね」
Cさん「じゃ、ミドルレイヤーは掛布団の上においておこう…おやすみ(^_-)-☆」
- 就寝の時、枕元にはヘッドライトをお忘れなく。またペットボトルやテルモスも枕元にあると喉が渇いたときにすぐ手が届きます。
- スマホやカメラの充電用にモバイルバッテリーを使うと良いです。
(小屋の発電機が回っている間に共用コンセントから充電させてくれる小屋もありますが、取り合いになります。) - 大部屋は夜間にトイレに行く人のヘッドライトが照らされたり、いびきがうるさかったりします。アイマスクと耳栓があると熟睡できます。(寝坊に注意)
- 夜間はヘッドライトは赤いライトにすれば就寝者はまぶしくないので配慮しましょう。
🔳さあ、朝です。起床!
Aさん「おはよう!Bさん、Cさん。四時だよ…起きよう!」
Bさん「おはようございます。ああ、爆睡でした」
Cさん「なんかお腹空いたね…着替えないと…眠…トイレ行きたいな」
- 起床したら登山する衣服に着替えましょう。この時にレジ袋のようなポリ袋はがさがさと音がうるさくて就寝者の一番の迷惑になります。高い音がでるような袋は使わないほうが良いです。
- 朝のトイレは混雑します、特に食後は混みますので、食事前に済ませることができる方は早い方が良いです。
- 食事前にはパッキングを済ませておきましょう。
- 布団や毛布は簡単にまとめておく程度で良いです。小屋番が干したり畳んだりしますので、きっちり畳んでしまっても広げるのに二度手間になります。
(布団の間に忘れ物を残さないよう注意!)
🔳朝食でーーす。
小屋番「おはようございます。5時になりました。朝食の準備が整いましたので食堂へお越しください。」
- 夕食の時と同じ手順となります。
- お湯が必要な方はポットを持参して朝食後にもらってください。(有料/無料のケースあります)
- 乾燥室に干したものなど、忘れ物が無いように注意してください。
🔳出発
Aさん「今日は□□岳だね。楽しみ!」
Cさん「天気も良いし、安全第一で頑張りましょう!」
Bさん「小屋番さんに挨拶してから出かけようよ。…お世話になりました!行ってきまーす。」
小屋番「いってらっしゃーい。おきをつけて!」
- 玄関先は靴を履く人で込み合います。ザックなどが邪魔にならないよう留意しましょう。
- 小屋番さんにはお礼を言って気持ちよく出発したいですね。
- ストックの準備やザックのフィッティングなどは、玄関から出て外で行いましょう。
さあ!今日の小屋はどんなところでしょう。ワクワクしますね!