中高齢者編にてジジイのひがみについて触れさせていただきましたが、ひき続いて単独行についても一言言わせてください。
何が悔しいって、やはりメディアの単独行いじめについてです。
どこかのお山で遭難事故とかあれば、メディアは直ぐに「単独行でした」「登山届は出ていませんでした」「保険に入っていませんでした」などと悪口を言いたい読者に受けの良いことばかり書き並べているだけで、何ら深堀もせず、どうすれば再発しないようにできるとか、登山者に役に立つことなど書きもしないのです。
グループ登山で、登山届を出して、保険に入っていてもアクシデントは起こるのです。
単独行での遭難件数
愚痴はそこそこに警察庁発表の「2023年山岳遭難の概要等」で開示されました単独行についてのデータを見てみましょう。
2023年(令和5年)は単独行で登山した方達のなかで1423人の遭難者が発生し、205名の死者・行方不明者となっています。
近年における過去のデータも表からご覧いただけますが、右肩上がりで遭難者が増えています。
遭難者が増えていることは真摯に受け止めて自らの戒めとすべきだとは思いますが、単独行だから遭難するというメディアの書き方は正しくないと言わせてください。
そうです、既にお気づきかもしれませんが表中の「全遭難者に占める単独登山者の割合」を見ていただくとわかるように、単独行は全体の約40%であり残りの60%はグループ登山なのです。
単独とグループ登山者の遭難実態
では初めにここ近年の実態について把握してみたいと思います。
次の表は2006年、2015年、2023年について単独とグループ登山で発生した遭難者や死者・行方不明者を一覧に表したものです。
死者・行方不明者も含めてもう少し比較を進めてみたいのでグラフにしてみようと思います。
遭難者数 単独登山VSグループ登山比較
グラフにすると全体像が良く見えてきますが、2006年~2023年まで単独登山者よりグループ登山者のほうが遭難件数は大きいことがわかります。そして共に年々増加しています。
続いて負傷者ですが、こちらも単独登山者よりもグループ登山者のほうが多くなっています。
一方、死者・行方不明者は状況が異なり単独登山者のほうが多いですね。
やはり単独登山の場合は事故が起きても当事者が動けなかったり救出要請ができなければそのまま死に至る可能性は高く、行方不明のままになってしまうことも多いのでしょう。
死者・行方不明者数 単独登山VSグループ登山
死者・行方不明者数を単独VSグループ登山比率で表してみました。
2006年当時は単独登山のほうがグループ登山よりも死者・行方不明者が少なかったのですが、年々その比率は単独登山が増えて2023年には6:4に至っています。
その原因をもう少し深堀したいところですが、警察庁は詳細を開示していないのでこれ以上の分析ができません。
まとめ
今回は単独登山が遭難者拡大の原因といわんばかりのメディア発信に異を唱えたく事実を調べてみました。
その結果は遭難者数はグループ登山者のほうが単独登山より多く、決して単独登山が遭難を助長しているわけではないが、単独登山における死者・行方不明者がグループ登山を超えるところまで拡大しており、死亡・行方不明とならないためには単独登山は避けたほうが良い…という結論でしょうか。
本来ならば、単純な遭難者数の比較ではなく、単独登山者人口を基に遭難の発生確率を見る方が正しいのだと思いますが、データが公開されていないのでできませんでした。
また、個々の遭難事象を理解して登山を行う皆さんの知識とすることが遭難そのものを減らしていくことができる方法と思いますが、そのような記事をメディアが書いてくれることを期待したいです。