登山は老若男女誰もが楽しめる自由な活動ですが、山にかかわる人たちに不都合が生じたり自然に対して悪影響が及んだりしないよう、一定のマナーやルールがあります。
ここでは、私が学んできたり経験してきたことを「マナー」「ルール」や「注意事項」として一覧にしてみました。
- マナー:登山者や自然を大切にするために最低限守りたい行為
- ルール:登山において、遭難に繋がるような事故やケガのリスクを少しでも小さくするために守るべき行為(自ら、もしくはグループの決め事)
- 注意事項:登山中に事故やケガを発生させないために、注意を払うべき行為。
(ヒヤリハットの経験からフィードバックされた注意事項等)
分類 | ルール・マナー | リスク分類 |
マナー | 登山計画(登山届)を都道府県警察や家族に提出する。 | |
マナー | 自然を破壊しない、落石をさせないためにも、登山道以外の歩行はしない。 | 自然環境、落石 |
マナー | 山火事を防止するために焚火や直火を使わない。 | 山火事 |
マナー | ごみは持ち帰る。環境を汚さない配慮や食べ物や残り汁、ごみの放置が害獣に人間の食べ物の対する興味を与えてしまう。 | 自然環境、獣害 |
マナー | 山の植物や石などを持ち帰らない。 | 自然環境 |
マナー | トイレ(特に大便)は携帯トイレを利用する。高所では微生物がいないので排泄物は分解されず、乾燥して空気中に飛散する。 (携帯トイレがない場合は、穴をほって便は埋める。紙は持ち帰る) | 自然環境 |
マナー | 登山道でのすれ違いは、登りの登山者の呼吸を乱さないよう登り登山者を優先する。 (危険がある場所でのすれ違いは、その場所の状況で判断) | 疲労 |
マナー | 登山道でのすれ違いにて止まる場合、転滑落しないよう山側に寄り、ザックを山側にしストックは後ろ手に持つようにしてすれ違う相手に接触させないよう気を配る。 | 転滑落、転倒 |
マナー | 複数のグループで登山を行う場合は、すれ違う登山者の迷惑にならないようにするために、グループ間の距離をおいて行動をするようにする。 | 転滑落、転倒 |
マナー | 万が一落石を起こしてしまった場合や自然落石の発見時は、大きな声で「ラーク!」と叫び下方にいる登山者に注意を促す。 | 落石 |
ルール | 自分(グループ)の力量に合った登山計画を作成する。(力量以上の山行に無理に参加しない) | 基本 |
ルール | 体力向上、体調維持、睡眠時間確保に心がけ、体調が悪い場合は山行に行かない。(参加しない) | 基本 |
ルール | 緊急時を除き、計画外の行動(ルート変更、延長)をしない。行う場合は必ず第三者に伝えたうえで行う。 | 基本 |
ルール | 登山が終わったら計画通りであったか、不具合は無かったかを振り返り、ヒヤリハットや反省点の記録を行う。(備忘録や共有を目的とした記録) | 基本 |
ルール | グループ登山では、CL、SL、ナビゲーター等の役割を決める。CLが総責任を持つ。 | 基本 |
ルール | グループ登山では、はぐれることを避けるために全員同一行動をとること。 | はぐれる |
ルール | グループ登山では、リーダーは最後尾を歩きメンバーが見渡せるようにし、人数の確認やメンバーの体調確認等を適宜行う。 | はぐれる |
ルール | グループ登山では、列がばらけないよう、並び順を決める。 一番弱いメンバーを2番手とし、先頭のSL(ナビゲーター)は2番手に合わせてスピード調整をする。 | はぐれる |
ルール | グループ登山では、リーダーが視認・監督できるよう、5~7名以下のメンバー人数とし、これを超える場合は複数のグループを設ける。 | はぐれる |
ルール | グループ登山では、グループから一時的であっても離れる場合、必ずメンバーに声をかける。 | はぐれる |
ルール | グループ登山では、”はぐれた”という事象に備えて、予め連絡手段や再集合場所を決めておく。 | 二次被害防止 |
ルール | グループ登山では、故障者(怪我、病気、疲労等)が発生した場合は、全員(または一部適切人数)が付き添い行動(エスケープ、下山)をする。 | 二次被害防止 |
注意事項 | 平地の天気予報だけでなく、山の天気予報も確認し、天気、気温、風速、風向等からリスクを想定し対処を考える。(装備とレイヤリング) | 悪天候、熱中、低体温 |
注意事項 | 入山前に登山道の状況(鎖場、渡渉、急傾斜地、進路が大きく変化する点、過去に事故があったポイント等)を調査してリスクの想定と対処を考える。 | 道迷い、転倒、滑落 |
注意事項 | 道標の有無に限らず分岐点や大きく方向の変わる点では一旦足を止めて、道標や地図にて進行方向を確認する。 | 道迷い |
注意事項 | 広い尾根、平たい山頂等、霧や降雨で進行方向が分らなくなるような地形のルートは、計画の段階でその場所を把握し、コンパスや地図を使って進行方向を確かめられる準備をしておく。 | 道迷い |
注意事項 | 登山道のピンクリボンやマークを安易に信じない。営林やマタギの道等も類似のマークが利用されるので、必ず地図による進路確認を行う。 | 道迷い |
注意事項 | 雪山のトレースを安易に信じない。先行者が危険なルートを通っている場合はルートを変える。 | |
注意事項 | 万が一迷った場合は来たルートを戻り位置確認ができるところまで引き返す。ショートカットを試みたり、沢へ下ると更に状況が悪くなる。 | 道迷い |
注意事項 | 木や岩に引っかかって危険なのでザックに物をぶら下げない。 | 転倒 |
注意事項 | 浮石に乗らないよう足元をよく観察して歩く。(特に雪解け後は浮石が増えるので注意) | 転倒 |
注意事項 | 木の根が露出しているところは、木の根に乗ると滑るのでできる限り根には乗らない(乗る場合は滑ることを頭においておく) | 転倒 |
注意事項 | 疲れる前に体と脳を休ませる。少なくとも45分~1時間に1回の休憩を摂る。(特に下山時は疲労が溜まっているので、体だけでなく脳を休ませて集中力が途切れないよう配慮する) | 疲労 |
注意事項 | 疲れや熱中症(低体温)、足の攣りを防止するため、呼吸や汗として失われた分の水分を小まめに補給する。がぶ飲みは吸収できず尿として排出されてしまう。 (10~15分毎に、一口か二口の水分を摂る) | 疲労、病気 |
注意事項 | 二足歩行できない岩場では、四肢を活用できるようにするためストックをしまう。 | 転滑落 |
注意事項 | 鎖場(ロープ)では、他者の動きの影響を避けるため、同一スパン内に1名の利用とする。 | 転滑落 |
注意事項 | トラバース路の谷側は崩れやすいので、踏み外しやストックの空振りが起きることを留意しながら歩く。 | 転滑落 |
注意事項 | 転滑落に巻き込まれないよう、またはストックやアイゼン等で攻撃を受けてしまわないよう、先行者に接近して歩行しない。 (下りでは自分の転滑落で先行者を巻き込まないよう、間を開ける配慮をする) | 転滑落、怪我 |
注意事項 | 複数のグループで登山を行う場合は、崖崩れや雪崩に同時に巻き込まれないようにするため、グループ間の距離をおいて行動をするようにする。 | 崖崩れ、雪崩 |
注意事項 | 急傾斜を横切ような林道では、落石の直撃を避けるために山側の歩行は避ける。 | 落石 |
注意事項 | 落石や滑落に備えてヘルメットをかぶる(携行する) | 落石、滑落 |
注意事項 | 急峻な岩場では岩の上部が見えにくくなるのを避けるため、ヘルメットの下につばのある帽子はかぶらない。 | 落石 |
注意事項 | 強風、雪山などでフードを被って歩行している場合、周りの音が聞こえにくい(落石音や仲間の声)ことを知っておく | 落石、はぐれ |
注意事項 | 熊に人間の存在を知らせるために、熊ベルやラジオ等で音を発しながら歩く。 | 獣害 |
注意事項 | 熊に襲われた場合に備えて、熊スプレーを携行する。 | 獣害 |
注意事項 | 遭難時、早期に発見してもらうためのビーコン(ここヘリ)を携行する。 | 行動不能、雪崩 |
注意事項 | 雪山登山では自身または他の登山者が雪崩に巻き込まれた場合に備えて、雪崩ビーコン、プローブ、シャベルを携行する。 | 雪崩 |
注意事項 | ビバーク時に備えて、ツェルト、細引き、アルミ保温シート、非常食等を携行する。 | ビバーク |