リスクマネージメントとは何でしょうか?
それは…「発生しうる事象や原因を予め想定し、トラブルを未然に防いだり、被害を最小限に留めたりするための手段」です。
スポーツ社会活動などで広く用いられていますが、トラブルの発生が「遭難」という命に直結する登山だからこそ山行の一部としてリスクマネージメント取り入れて欲しいと考え、ご紹介を進めてゆきたいと思います。
登山のリスクとは
登山は野球やサッカーなどと異なり管理されたフィールドではなく自然が相手である故に、登山者は様々なリスクをうけおって行動することになります。
令和2年に報告された遭難情報によると、最も多かったのが道迷いで44%、続いて滑落=14%、転倒=7%といった分類でした。
この報告内容を考えられる原因へ掘り下げたのが以下の表になります。
見ていただければわかる通り、原因の大半は登山者自らの問題であり、例えば道迷いが起きてしまった原因は、ルートミスであり、その原因はGPSや地図を持っていない等の準備不足であったり、疲労でいえば自分の体力では無理な登山を強行したことなどにあると思われます。
つまり、登山にはこれらのリスクがあるという危機意識をもって準備を進めておくことで、ある程度の予防ができる(予防をしなければならない)ということを知っておくことが大事だと考えています。
一方、厄介なのは落石や雪崩などの偶発的な事象ですね。
しかし、落石や雪崩を自らが予防することはできませんが、万が一に備えて発生しやすい場所を知っておくとか、ヘルメットやビーコンなどの道具を準備していくといったことは必要だと思います。
リスクに向き合う心構え
さてリスクを最小化するにはどうすればよいのでしょうか。もちろん計画段階や現場でのリスク対応を考えることは大切なことなのですが、登山に対する危機意識を絶えず持っていることが肝要なのではないでしょうか。
ただ「危機意識を持っていただきたい」と言っても、危ない目に会わないとなかなか実感が生まれないとは思いますが、幸い今の時代には多くの方が自己経験を発信しています。
例えば、ヤマレコやヤマップなどの登山情報コミュニティーでは、危険な目に会ったこと、ケガをしたこと、救助されたこと等、経験者は同じようなリスクを背負っていただきたくないという思いから情報発信をしてくれているので、是非これらの投稿を検索して自己意識醸成を行って「自立した登山者」になっていただければと思います。
計画段階のリスクマネージメント
登山のリスクとは「道迷い」「滑落」「転倒」「行動不能」等多岐にわたりますが、具体的にはどのような準備を考えればよいのでしょうか。
下の表はリスクの発生要因と準備段階で調査・検討・計画をしていただきたい項目を列記したものです。
リスク要因 | 最小化するには | 準備すべき事項 |
ルートミス | 力量に合った計画 ルートの予習 | 登山計画(分岐、曲がり角把握) GPS準備 ベアリング表 |
過疲労 熱中症 低体温症 | 力量に合った計画 適正体温の維持 | 登山計画(ペース配分) 食料・水分摂取計画 レイヤリング |
注意散漫 | 危険個所の把握 集中力の維持 | 登山計画(休憩・補給計画) 食料・水分摂取計画 |
悪天候 | 天候の事前把握 天候急変時の準備 | 継続的天候調査 雨具、ビバーク装備 |
故障・病気 | 出発前の体調確認 緊急時連絡方法確認 | 日々の体調調整 ファーストエイド 携帯電波接続地確認 |
落石 | 危険個所の把握 | 登山計画(危険個所把握) 最新のルート情報把握 |
雪崩 | 危険個所の把握 | 登山計画(危険個所把握) 雪崩危険情報の把握 |
ご覧になっていただいてわかる通り、きちんとした登山計画を作成することで、多くのリスクが最小化できることがお分かりだと思います。
また、付随する食料計画や様々な事前調査によってこれから行おうとしている登山で予測されるリスクも小さくできます。
また、中高齢者にとっては若い人達よりもより慎重にリスクの最小化をしておく必要があるわけで、是非危機意識をもって準備をしていただきたいと思います。